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Trance-for-Beginners




はじめてのトランス (その2)
「ゴアトランス」の分類(やや無理目)



 前提をトレースしたところで、より具体的にゴアトランスそのものはどのような内訳なのか……ここで音楽を言語化することの困難さに、はたと直面するわけだが、無理を承知でゴアトラを大雑把に3〜4種類の系統に大別し、説明してみよう。

 まず最初に、いわゆるエスノ調のメロディーラインが特徴的で、ビートも割とシンプルな4つ打ち(バスドラのキックが「ドンドンドンドン」と拍ごとに打たれるスクエアなビート)タイプの曲。この系統は覚えやすく聞きやすいため、初心者でも入り込みやすい。とくに感情爆発アッパー系ゴアのイスラエリ・トランスにこのタイプが多く、ゴアトラ黎明期から活躍している古参組のCDでたやすく見つけられる。イスラエルのアストラル・プロジェクション、イギリスのマン・ウィズ・ノー・ネイムあるいはジ・インフィニティ・プロジェクト、フランスのトータル・エクリプスといったあたりを、ひとまずは挙げておこう。

 次により構成が複雑かつ緻密で、いささかロックがかったビートやアレンジ〜曲構成が特徴で、さらには民族楽器やパーカッションの生音を多用したトライバル系タイプ。何といってもこのタイプの筆頭格はイギリスのジュノ・リアクターだし、近年のイート・スタティックもたんなるトランスにとどまらない(ブレイクビーツやジャングルをも取り込んだ)幅広い音楽性を織り交ぜたサウンドを志向している。またこういった進化形トランスを総称するカテゴリーとして、旧態依然なゴアトラよりもサイケデリック・トランスという呼称をとることもある。

 そしてその双方のどちらもでない上級者向けゴアトラとして、メロディーラインもほとんど希薄で、ただグニョグニョした音の連なりが空間を埋めつくしたり、あるいは音の粒子が宙からハラハラと舞い降りてくるような効果音〜イコライジングやフランジングといったエフェクティブな音色の微細な変化を特徴とし、いわゆる曲としての輪郭や構成が曖昧なタイプ。ドイツSpirit Zone所属のスペーストライブやイギリスのサイコポッドあたりがまさにこれだし、最初のベーシック・タイプにもかかるとはいえ、そのミックスの殆どが轟音と歪みきったノイズの塊で聴く者をひん“曲げ”“めくり”“もっていく”偉才ハルシノージェンも、こっちに分類したい気分がする。このタイプは全体的にダークな“怖い”系の印象も払拭しがたく、耳慣れない人にはちと親しみづらいかもしれない。

 さらにダブやアンビエントのエッセンスを取り入れたリスニング・タイプのゴアトラ……とはいえゴアは重層的かつドラマチックなので、アンビエントとはいえ“なごむ”より思わず聞きこんで“音ハマリ”してしまうタイプ……も、数こそ多くないが近年いろいろ発表されている。先日リリースされたサアフィ・ブラザースのフルアルバム『Mystic Cigarette』もそうだし、ジ・インフィニティ・プロジェクトやハルシノ等のユニットによるアンビエント・ゴア・アルバム『The Mystery of The YETI』も「聴く映画」モードを発揮している。イギリスのオーガナイズ・チーム、リターン・トゥ・ザ・ソースのコンピレーションなどは、大抵2枚組のうちの1枚が必ずアンビエント篇なので、この手のサウンドを腹一杯満喫できる。

 ちなみにこうした複数タイプの曲を、特定アーティストがアルバム中に混ぜこんでいるケースも当然少なくないし、パーティでも「はじまり〜盛り上がり〜中途休憩〜再度の盛り上がり〜エンディング(上がり)」というように、DJのテイストと時間帯のモードによってこれらが巧妙に使い分けられていることを付記しておくべきだろう(なにせゴアトラのパーティは、下手すれば12時間とか1日とか平気でぶっつづけで行なわれるので、ある程度の起伏がないと、とてももたない)。
 つい数年前まで、この手のゴアトランスはほとんどディスクでは出回っておらず、プロのDJもDATでやりとりしていたくらい(ゴアトラは最初から曲が完結していることも手伝って、ミックスしたりつなげたりせず、ストレートに曲を続けていくだけという場合も少なくない)だが、96〜7年以降、アルバムもコンピレーションも各ゴアトラ系レーベルより毎月のようにリリースされ、今では大型輸入CDショップないしテクノ専門店にいけば、立派なゴア/トランス・コーナーができているくらい。
 逆にそうなると、どれから聴いてみればいいのか、初心者にはなかなか判断に悩むところだ。一般にテクノは匿名性が強くアーティスト名も解かりづらいし、ビニール盤やシングル単位でしかリリースされていないトラックもあったりで、門外漢にはなかなか敷居が高いのだが、ひとつ入門者は適当なコンピレーション(ベスト盤的なオムニバスCD)をとりあえず買ってきて、複数アーティストの曲を聞き較べ、気に入った曲の作り手の名前/ないしリリースしているレーベル名などを手掛かりに、その系列を辿っていく……というやり口がある。
そういう最初の水先案内になればということで、ビギナー向けの ゴアトランス・ディスクガイドを別項に記しておいた。また、ゴアトランスの代表的な老舗レーベル(Blue Room Released/TIP Records/Dragonfly/Phonkol )のアルバム名を 代表的サイケデリック・トランス・レーベルから出ているトランス・アルバム&コンピレーション一覧として列挙しておいた。推薦盤には印を付してある。何かの参考になれば、幸いである。

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